短いようで長かった8月。夏といえばトウモロコシなのである。それはもう。スーパーの野菜売り場には皮もヒゲもついたままのトウモロコシが雑多に積まれている。そばにゴミ箱が用意されているので、外側の皮を何枚か剥がして状態を確認してからカートに入れるのが一般的な作法だと思うのだが、たまに身ぐるみ剥がされた状態で置き去りにされていることがある。そこまで剥がしたんなら責任持ってお迎えしたれや…と思いつつ見なかったことにする。ちなみに北海道ではゴーヤはレアで、そこまで大量に出回っていない。どうぶつの森の初期フルーツのシステムを思い出す。
トウモロコシといえば、私は小学生の頃、自由研究で「海の水から採取したニガリで豆腐をつくる」というテーマを設け、夏休み中せっせと海水のバケツに浮かぶゴミを取り除いては蒸発するのを待った。水分がだいぶ減ったところで海水を鍋で煮詰めて一応ニガリらしきもの(めちゃくちゃ苦い)を採取した。ここまでは良かったのだが、なぜか「大豆ではなくとトウモロコシで豆腐をつくったらどうなるだろう?」という方向へ関心が向いてしまい、トウモロコシをミキサーで潰し、丁寧に濾過してできた「豆乳」ならぬ「トウ乳」にニガリを投入。結果、トウ乳は凝固せず実験失敗。考察では「ニガリはタンパク質と反応して豆腐ができるが、トウモロコシは大豆に比べタンパク質が少ないため固まらなかった」みたいなことを書いた。それはそうだろうけどさあ!当初の研究目的からだいぶズレた着地。最後の最後に大暴投、それまでの努力が水泡に帰す(𝓚𝓲𝓼𝓼…)という流れはその後の私の人生でもよく見るパターンである。悲しい哉。

はじめてトウモロコシご飯を炊いた。レシピでは「包丁で実を削ぎ落とす」と書いてあるが、それだとだいぶ芯に残ってしまうので、一列ずつ包丁の刃を差し込みパキッと横に倒すことで根本から採取することに成功した。一緒にバター(でもマーガリンでもない安物の乳製品)、胡椒、芯を入れて炊飯ボタンを押す。しばらくすると、トウモロコシの香ばしい香りが部屋いっぱいにたちこめる。至福のひととき。この瞬間に味をしめ、今季はトウモロコシご飯を三回炊いた。

トウモロコシといえば(まだする)、よく行く直売所では皮を剥がされた状態で売られている。山の中にある、倉庫のような小屋なような直売所には朝採れたばかりの新鮮な野菜が並ぶ。農協を介さないからとても安い。たしか照明とかはなくて、自然光だけでやっている。最近はノンフライヤーを買ったので、そこにズッキーニやトマトやナスや鶏肉を切って入れ、油を霧吹きでシュシュっとかけてボタンを押すだけでメインディッシュが出来上がる。味付けはカルディとかで売ってるイタリアンハーブ的なやつを適当にガリガリやる。ほとんど毎日そればかり食べている。せいろで蒸した野菜より焼いた野菜の方が美味しい。
直売所に寄ったついでに、どこかでご飯を食べて帰ろうとGoogleマップで調べると、少し行ったところに料理店が見つかった。レビューを読むと天ぷらが美味しいらしい。あとYoutubeをやっているらしい。もしかして……思い当たる節があった。
狭い道を走って山の奥へと進む。本当にこんなところにあるのだろうか…と思うような場所に、あった。店の中へ入る。やっぱりそうだ。間違いない。この店構え、よく喋る大将。生前父が好きでよく見ていたYouTubeチャンネル『こぶしの板さん』の店だ。北海道にあったんだ……知らなかった。
揚げたての天ぷらが山盛りの天丼に、小鉢と味噌汁と漬物、食後にコーヒーまでついて1,300円。今日はアチいな〜ビールが飲みてえな〜と言いながら天ぷらを揚げていたかと思ったらプシュっという音が聞こえてきて、金麦を飲んでいた。本物だ。
店に入ったときは満席だったけど、食べ終えるころにはカウンターの常連さんと自分だけになっていた。「Youtubeを見て来てくれたのかい?」と聞かれたので「父が好きでよく見てたんです」と答えると、庭(というかほぼ山)の睡蓮や紫陽花を見せてくれた。一面に広がる紫陽花は25年かけて少しずつ株を分けて育てたそうだ。

嫌いな芸能人がとにかく多かった父。テレビを見なくなり、居間のデカいテレビでYoutubeを見るようになった。中でも好んでよく見ていたのがこぶしの板さん、大食いのもぐもぐさくら、嵐山モンキーパークライブ配信。板さんの番組は、魚を捌くのを見たくて登録していたのだと思う。「よく喋るけど腕はいいんだ」と、なぜか上から目線だった。

お土産をたくさんいただき、「近いんだからまた来たら良い」と言ってくれたので、また来ます。帰りの車内で少しだけ泣いた。本当は、店に入った瞬間から泣きそうだった。家に帰って母と兄に写真を送ったら、何も言う前から「おっとうが見てたやつ?」と返ってきた。懐かしいなあ。おっとうと行ってみたかったなあ。って。私も同じことを思ってた。

最近はサブチャンネルの方を頻繁に更新されている
8月24日、文学フリマ札幌に参加した。電車で行くか車で行くか当日朝まで迷っていたけれど、なんかいろいろ面倒くせえな!となって車で向かった。高速を走りながら、意図せず札樽自動車道に乗っていることに気付いた。札樽道を通ってSASSONを売りに…まあただそれだけなんだけど…
コンベンションセンターの近くのタイムズの駐車場は一日最大800円。きのとや白石本店へ徒歩で向かい、優雅にケーキでモーニング……の予定が、カフェの営業は10時からだったらしく、テイクアウトしてもつき公園のベンチで食べた。フォークをもらい忘れたので手で食べる。コロナ禍以来のつかみ食べ。たまにやると良いですよ。つかみ食べの楽しさを広めたい。


お隣ブースの青木さんにご挨拶する。布地がまさかの青かぶり。青青として遠くからでも目立つぞ!設営を終えた頃にふたさんがふらっと現れた。第一声が「帰りたい」だった。

札幌は東京ほど人がごった返しておらず、会場も広々としていて過ごしやすかった。これぐらいがちょうど良い。札幌開催のために用意した新刊『SASSON』がたくさん売れました。謙遜せず。「ここ知ってる」「先週行ったばっかり」「あそぶべ公園だ」「気になってたけど行けなかったとこだ」など、地元の人々の生の声が聞けて面白かった。生粋の道産子ではない自分が、こうして地元の方々とローカルトークできるようになったのが何より嬉しいのです。
北海道に引っ越してきて1ヶ月以上経ったが、未だに全然馴染めない。寒い。春なのに。毎朝天気予報を見る度に土地がデカすぎてげんなりする。なんだよ「ザンギ」って。「からあげ」って言え!
休日に早起きして近所を散策していたら公園の木が白樺で危うく舌打ちしそうになった。
イキリやがって
立ち読みしてくれた人にいろいろ説明するんだけど、「これはジュンク堂のカフェについて、お隣のこの方に書いてもらったエッセイで」と紹介したら「ジュンク堂の社員です」という方がいて驚いた。ふたさんと二人で起立してお礼をした。どうか、ふたさんの居場所をなくさないでください。
ふたさんブースとの真ん中あたりで「私設図書館祝日で読んで来ました。こっちもこっちも」という方がいて、そうなんですか〜ありがとうございますというようなやり取りをしていたら、「ほら」と言ってその方が前に背負ったリュックに祝日の缶バッチがついてたのは流石に笑いました。視線の誘導があまりにも4コマみたいな展開だったから。チャンピオンベルトみたいな位置に輝く祝日の缶バッチが目に飛び込んできたあの瞬間、間違いなく集中線が見えました。
ぽつぽつと『ハイウェイ・オアシス』を買ってくださる方がいたのが本当に嬉しかった。一番売りたい本なので。これに関しては「バカ売れしたい×1」じゃなくて、「売っていきたい×∞」なんですよね。絶妙に意味が違う。
前回の文フリではお釣りの計算でかなりテンパったので今回は会計アプリを導入しました。めちゃ便利。と言いつつ、5千円札を出してくれた相互フォローのおかかかけたさんに、4000円のお返しを手に持ったままへらへら雑談して、しれっと自分の手元に戻そうとしたところを「あの、もしよろしければその4000円をいただけると嬉しいです…」と言わせてしまい、かなり危なかった。というかほとんどアウトです。めちゃくちゃ自然な手つきで犯行に及んでしまいそうになっており、自分でも怖かった。お客さんとして来てくれる皆さん、注意してください。(本当に、申し訳ないのですが、指摘してください)
夜は祝日の佐々木さんが開催してくれた打ち上げに参加しました。偶然ブースがお隣だった青木さん、NOMAD BOOKSの森田さん、ふたさん、佐々木さん、私からははてなブログのお友達のニャントラさんと神田さんにお声がけして、(ニャントラさんは今回都合がつかずでしたが…また必ず!)ほとんど初対面の人たちと飲みました。私自身、結構ひと見知りするタイプなのですが、不思議と初対面という感じがせず、すご〜く楽しかったです。たぶんなんですけどあの場にいた人全員ひと見知りだったと思う。ひと見知りの人のことを信用しています。出てきたビールが全部面白い味で面白かった。クラフトビールが飲み放題ってすごい。

覚えてるトピック
『他責思考でいこう』著:藤本拓
↑絶対売れる
二軒目では夜パフェを食べました。こんな遅い時間にパフェの行列ができるのすごい。異空間。神田さんのパフェに豆苗が刺さっていて謎でした。夢…?と思う。自分が頼んだアンスリウムのパフェは見た目が怖かった。ジェノベーゼが入ってると書いてあってジェノベーゼって、あのジェノベーゼ?と思いながら食べたらガチでバジルだった。複雑な味〜。
家に着いたのが深夜1時近くで、長い一日だった。知らない人と飲みに行くのは楽しいので、積極的にやっていくべきと思った。
翌週、早速NOMAD BOOKSさんに遊びにいきました。というのも、文フリで購入した青木聖奈さんの『選んで無職日記』がめちゃ面白かったので、既刊も読みたい!と思って伺ったのでした。こういうのはすぐ行動した方が良い。前から行ってみたいと思っていたNOMAD BOOKSさん、選書も喫茶室の雰囲気もすごく素敵で、森田さんのZINEのテーマが「わたしの居場所」だったのがめちゃわかる〜となりました。個人の時間や居場所を大切にしたいという思いがそのまま表れている空間でした。来年『SASSON vol.2』をつくると決めたので、ぜひ掲載させてください!
読んだ本とか漫画とか
『観光客の哲学』東 浩紀
買ってずっと本棚にしまってあったのだけど、観光地のZINEをつくるにあたって読んだ。難しい話とやさしい話が行ったり来たりする感じで、そのゆらぎが面白かった。家族の話だったり確率の話だったり、結構「観光客」という論題から逸れたテーマが差し込まれ、無理にそれを「観光客」に帰結させないところがなんか新鮮だった。あ、いいんだ…みたいな。
この時期読んでおこうと思ったもう一つの理由として、北海道では7月の参院選で参政党の候補者が「北海道のグローバル化に規制を」という政策を掲げ、これが支持を集めて実際かなり競るところまで票を伸ばしたという事実があります。排外主義とオーバーツーリズムへの不満がマッチしてしまった結果だと思っていて(それ以外も勿論ある)、それはかなり最悪だと思う。
『ひらやすみ(9)』真造圭伍
ドラマ化決まりましたね〜
これまでゆっくり進んできたストーリーが、9巻では一気に加速した感じがする。
『RIOT(1)(2)』塚田ゆうた
高校生がZINEをつくる漫画。喫茶室で(1)(2)巻を読んでめちゃくちゃ面白かったので手元に置いておきたい!と思い注文しました。あえてアナログを極めることの面白さ。世界がぶわーっと広がっていく感じがすごくいいです。
見た映画とか
『私たちが光と想うすべて』監督:パヤル・カパーリヤー

素晴らしい邦題。漢字とかなの使い方が好きです。
朝イチで見に行ったのと、中盤まで主要人物の見分けがつかなかったのもあって、うとうとしてしまい、話の筋がよくわからなかった。自業自得。
途中目が覚めて(死んでる……?!)と思ったら(生きてたんかい〜)と思うなどした。ていうか人違い。ラストの映像がひたすら美しい。
聞いてた音楽とか
『夏の細部』Base Ball Bear
細かすぎることばかりが
蘇る ふとした瞬間
私が高校生だったか大学生だったか、まだティーンだった頃、兄に「最近何聞いてんの?」と聞いたら「ベースボールベアー」と言われて、「ベースボールベアーってなんか曲ダサくない?」って言ったら「ダサいところが良い」と言われたのをものすごく覚えている。ダサいのが良い??って、当時としては衝撃だったんだよな〜自分にはそういう概念がなかったから。今はその感覚めちゃわかる。
『Stop Motion feat.魔界ノりりむ』ピーナッツくん
ピーナッツくんのアルバム良すぎ
11月の文学フリマ東京41に参加することが決定しました(誰か隣接申請しませんか)新刊は出せたら出したい。『SASSON』は増刷します。8月はお盆も仕事してたから休みは9月にまとめてとる。私にはまだ夏休みが残っている。ふはは、最高〜。1時11分。寝よ。



