ねているときいがいねむい

ねているとき いがい ねむい

人には人の乳酸菌

iPadでつくるZINE制作のための入稿ガイド


はじめてZINEを制作してみてわかったのは、「大体のことは実際にZINEを制作してみないとわからない」ということである。
一からZINEをつくるのは思っていたよりずっと大変だった。

本稿では文学フリマ参加申し込みからZINEの制作、通販に至るまでの過程をざっくりまとめます。


文学フリマ参加申込

2024/05/14 参加のお誘い
  • mudaさんから「9/24に開催される文学フリマ札幌9に出店してみませんか…!」とメッセージをいただく
  • 大変うれしいお誘い…!ただこの時点では9月の日程がまだ不確定だったため一旦保留に
2024/06/16 参加申込
  • 仕事の日程が決まり、文学フリマ札幌9に参加します…!とmudaさんに回答
  • 文学フリマのサイトから参加申し込み
  • この時点で先着250名に入れなったため抽選対象となる
2024/06/26 参加決定
  • 文学フリマ当選のお知らせ(今回は応募者全員抽選なし)
  • 出店料(5,200円)の支払い・隣接配置申請


ZINE制作準備

2024/07/18 用紙見本注文
  • 印刷会社に用紙サンプル帳を注文する
  • 表紙はつるつる、誌面はざらざらの用紙にしたかった
  • 用紙見本はあってもなくても良いが自分は実際に触れて良かったと思う
2024/07/27 環境整備(デバイス・アプリ)
  • ようやくZINE制作に着手

編集アプリやソフトについてmudaさんに相談すると「文章は《Pages》、表紙や図などは《Keynote》で制作し、PDF変換・入稿しました」と教えていただく。なるほど…それならOfficeやAdobeを導入せずとも何とかなりそう!ということで、iPadでZINEを制作していくことにする。なお、この時点での進捗:0文字。

インタビュー

2024/08/05 インタビュー【nszwさん】

nszwさん(id:hellogoodbyehn)のブログはかなり独特だと思う。勿論めちゃくちゃ良い意味で。少し前に読んだ本『センスの哲学』の中で千葉雅也は「センスとはリズムである。リズムとはうねりとビートを連続的に並び替えたものである」(意訳)と定義している。その意味でいうとnszwさんのブログは「センス」そのものだ。うねりとビートというのは要するに0か1かの並び替えであるらしいのだが、それはつまり、何を書いて/何を書かないか。その選択の連続によってグルーヴは生まれる。
nszwさんのブログは基本的に月のはじめに一ヶ月分の日記がまとまった形で更新される。私はnszwさんのブログが更新されてもすぐには読まず、一日の終わりまでとっておくことがある。片手間ではなく、じっくり読みたい。食後のデザート…と表現するのはちょっと違う、もっとソリッドでディープな感じ。一ヶ月分の日記を読み終えるにはめちゃくちゃスクロールしなければならない。前日からの流れをスムーズに引き継いだ日もあれば、一行で完結する日もある。そのグラデーションやコントラストが面白い。
私が特に好きなのは、同居人の方が話したその日のできごとを、まるで同居人の方が書いたような視点で振り返ったかと思えば、急にnszwさんサイドに視点が戻る…というような手法で書かれた日記である。この書き方はnszwさんのブログでしか見ない独特な文体だなあと思う。ものすごくパーソナルな日記でありつつ、どこか小説のような俯瞰した視点があり、それでいてときには思考の深いところへダイブする回があったり…この「波」こそがnszwさんのブログの面白いところだと思うし、だからこそ毎日更新よりも一ヶ月分をまとめて更新された方がその連続性を楽しむことができる。
インタビューの中でnszwさんは「はてなブログは自分の〝城〟」とお話しされていたが、本当にそう。nszwさんのブログはマジで、城。

2024/08/06 インタビュー【KiEさん】

KiEさん(id:sasanopan)のブログといえば、私は『初対面の人が恋人になるまで自分が飲んだアルコールの量について考える』というエントリが本当〜に大好きで、繰り返し何度も読みに行っている。自分の身の上に起きたドラマチックな部分を切り取って文章にするのは、かなり体力がいることだと思う。やっぱりどうしたって痛みを伴うし、他者の目線だって気になる。いつか黒歴史になるかもしれない。人生をコンテンツとして消化することに対する躊躇いもゼロではない。けれども私はさあ、こういう文章が読みたいよ!!それこそ「あなたの話が聞きたい」とすごく思う。個人ブログの醍醐味ってきっとそういうとこだから。
最近だと『韓国旅行に行った話と祖母の話と』という記事が心に残っている。身内を亡くした喪失や自分の中にある情けない感情に真摯に向き合い書き切る胆力。生きていればハッピーなことばかりじゃなくて、悲しいことや後悔が残ることもあるけれど、ブログに書くことでとりあえずは前を向くことができるようになる。(私はそう)
少しだけ踏み込んだ話をすると、KiEさんのブログと私のブログの読者層は必ずしもイコールではないと思っていて、例えば私はインタビュー中にKiEさんが名前を挙げた同人ユニットとは相容れないところがある。というのもその中の一人にTwitterで悪口を書かれたことがあって、これはもう価値観の違いだからどうしようもないとは思うが普通に嫌な気持ちになった。今回『はてなブログ非公式ファンブック』ではブログの良い面ばかりをピックアップしたが、vol.2をつくることがあれば炎上やアンチコメントなどについても触れたいと思っている。そういった背景やお互いが所属する「界隈」の微妙な違いを踏まえたうえで、それでもこうやってインスピレーションで通じ合えるのはある種の奇跡だと思う。(というと大袈裟な表現かもしれないが…)

2024/08/09 インタビュー【中村さん】

読むと元気になる中村さん(id:danse)のブログ!なんとなくだけど以前から私は中村さんのブログにシンパシーを感じていて、同志だと思っているところがある。ブログの文体や内容は似ていないのだけれど、インターネットと向き合うスタンスだとか、根底にある体育会系スピリットみたいなところで共鳴する部分が多い。今回のインタビューでもそのことについてお話できて嬉しかった。いわゆる「純日記」的なブログがたくさんあるインターネットの海で、自分なりの得意なやり方を見つけてスイスイ泳いでいくような…それをある程度自覚的にやれているのも強い。最近だと『お米食べる』というブログがすごく良かった。「お米食べる 私はスタァ♪」私もこのフレーズが頭から離れなくなってしまった。何なんだ、洗濯機ですすぐことに関するエッセイ『すすぐということ』って…本当にあるのかと思って調べちゃった。いいよね、こういう語感がいいだけの意味のないフレーズ。どんどん書いてこ。
中村さんは中学生の頃からのはてなエリートであることや、はてなブログでアルバイトしていた経験があることなどから、はてなブログはてなブックマークなどのサービスについて話せたのも面白かった。このブログもインタビューで中村さんに教えてもらって以来、はてな記法で書いています。また最近の日記本ブームについて中村さんはそこまでのめりこめていないという話を聞いて、確かに私も今回ZINEをつくってみて「URL載せたところで誌面からは飛べないんだよな〜」というジレンマがあったので、やっぱりブログ(=weblog)という形態が一番自分に合ってるのかもな〜という気付きもあった。スターを送り合ったり動画を貼ったり、書きたいときにサクッと書ける…それができるのがはてなブログ。インターネット・ラブ!

執筆

2024/08/10〜 インタビュー書き起こし・執筆
  • 録音していたインタビューを文字に書き起こす
  • (議事録書くのは割と得意♪)
  • はてなブログをはじめるためのチュートリアル的な文章やブログ年表などを書く
  • (今思うともう少し掘り下げて書いてもよかったかもしれない)
  • 執筆には文章編集アプリ《Pages》を使用
  • B6サイズ用のテンプレートをDL
本誌サンプル

こだわりポイントとしては、紙の本としてパラパラめくったときに見やすいように

  • 個人プロフィールの誌面はページの上部ギリギリまでインデックス(画像左上参照)を入れ、目印になるようにした
  • フッターのページ数は中央ではなく左右にくるように配置した


使用フォント

  • 本文で使用したフォントは主に下記の3つ(すべてフリーフォント
    • BIZ UDPGothic(9pt)
    • 源柔ゴシックXP(9pt)
    • ヒラギノ明朝 ProN(9pt)
  • 実際に完成した誌面を見てフォントサイズは8ptでも良かったかも…と思った
2024/09/01〜 原稿(案)確認依頼
  • インタビューさせていただいた方々に原稿チェックをしてもらう
  • あわせてエッセイの寄稿を依頼する
  • やりとりはDM及びGoogleドキュメントの共有機能を使用
2024/09/01〜 表紙デザイン
  • 表紙デザインはイラストレーションアプリ《Procreate》を使用
  • 料金は買い切り2,000円
  • 表紙を考えるのは楽しかったが、デザインの基礎的な知識が圧倒的に足りないと感じた
  • (配色・レイアウトなどの工夫だけでなく、目を引くデザイン、一目見ただけで内容がわかるようなタイトルなど)
  • (せめて表紙に日本語タイトルは入れるべきだった)
  • B6用のテンプレートをDLしたはずが、サイズが間違っていることに直前で気付く
2024/09/05 すべての原稿が出揃う
  • ありえないほどタイトな〆切でご依頼したにもかかわらず素晴らしいエッセイをご寄稿いただく
  • (なんていい文章…)
  • (本当に大大大感謝)
  • 原稿の並べ替え
  • 誤字脱字、フッターのページ数等の確認
  • 表紙・原稿をすべてPDF化


入稿・印刷発注

2024/09/06 入稿・印刷発注
  • 表紙・原稿PDFを印刷会社にWEB入稿
  • 注文内容は下記の通り
    • 印刷物情報
      • [発注印刷物タイプ]冊子印刷
      • [綴じ方向]左綴じ
      • [本文ページ数]60
      • [印刷部数]40
      • [仕上がりサイズ]B6(W128mm × H182mm)
      • [入稿日]2024年9月5日(木)
      • [納品希望日]2024年9月16日(月)
      • [納品方法]宅配便
    • 印刷物仕様
      • [表紙印刷タイプ]オンデマンド印刷
      • [表紙印刷]カラー4色
      • [本文印刷タイプ]オンデマンド印刷
      • [本文印刷]両面スミ1色
      • [製本・加工]無線綴じ
2024/09/10 原稿最終チェック
  • 表紙サイズの確認など細かい修正を経て最終版を入稿
  • (お疲れさまでした…)
2024/09/12 支払い完了
  • 印刷会社に料金を支払う
  • 発注内容はオンデマンド印刷/B6/60ページ/40部
  • (40部が多かったのか少なかったのかは未だにわからない)
  • 最終的な支払額は送料込で24,000円


文学フリマ出店準備

2024/09/14 資材の買い出し
  • 買ったものリスト
    • 見本誌用のディスプレイスタンド(ダイソー
    • 値段表示用の付箋(ダイソー
    • マスキングテープ(ダイソー
    • 長机の敷布(手芸用品店カナリヤ)
    • A4アクリルスタンド(Amazon
  • 長机の半分を1ブースとして使用するため、敷布の推奨サイズは横90cm×縦120cm
    • 店舗で販売していた裁断済の布110cm×120cmを購入
    • 色は鮮やかなブルー
蛍光色と迷ったけど青にしてよかった!


納品

2024/09/16 納品
  • 発注していたZINEが自宅に届く
  • (ヤッター!!!)
  • 40部+予備用5部(サービス)の合計45冊が納品される
2024/09/18 文学フリマ参加見送り
  • 身内に不幸があり文学フリマ札幌9への参加を断念する
  • mudaさんに状況を説明し、委託を依頼する
  • 段ボールにZINE20部と販促用資材を梱包、mudaさんが宿泊するホテルのフロント宛発送する
  • ZINEの販売価格を600円に設定する

値段は当日の様子を見て決めても良いかな〜くらいの気持ちでいたのだが、急遽慌てて価格を設定する。製本代が40部で24,000円だったので、わかりやすく1部600円とする。ここは迷うところだと思うけど、同人誌なので利益を出さないようにしたかった。自分ひとりでつくったのではなく「協力していただいて完成したため」という理由もある。


頒布・通販

2024/9/22 文学フリマ当日
  • 委託代行いただき14部手売り
  • (本当に大大大感謝)
2024/10/11 STORESにて通販開始
  • ネットショップサービス「STORES」に通販サイトを開設
  • 登録手続きは思ったよりも簡単だった
  • STORESのフリープランは決済手数料5%
  • 価格は変わらず600円
  • スマートレターで送るため送料は全国一律210円とする
  • 今気付いたけど価格を810円にして送料0円とすれば良かったのでは…?(送料は出品者に入ってこないので)
  • 約一週間で26部販売

すなわち文学フリマ14部+通販26部=全40部が完売した内訳となります。予備5冊のうち3冊はご協力・寄稿いただいた御三方に心ばかりの謝礼金とともに献本しました。残りの1冊はブースに置く見本誌として、もう1冊は文学フリマ事務局へ寄贈しました(原則として見本誌コーナーに提供した冊子は事務局への寄贈として扱われる)。

以上がZINEをつくって販売するまでの全工程です。意外と大変だけど楽しかった!ただ文学フリマには参加できなかったので「ZINEをつくって販売した!」という実感や手応えはほとんどない。読んだよって方は感想いただけると大変ありがたいです。ZINEをつくってよかった〜って思えたことが一つだけあって、それは『はてなブログ非公式ファンブック』を読んではてなブログを開設しました!という方がいたことです。しかも個人的にすごく好きな文体。こんなに嬉しいことってない。みんなもっとブログを書こう!


おしらせ

GAMEBOYZは2025年1月19日(日)に開催される文学フリマ京都9に出店します!
既刊を若干部数増刷するほか、新刊としてエッセイを出品する予定です。今回もはてなブログのお友達ことmudaさんとお隣ブースで参加できることになりました。嬉しい〜!
長々書いたけど、現在のところ新刊の進捗は0%……。ギリギリでも案外なんとかなったな♪という経験が私をこうさせてしまった…終わろか……
ぽ〜〜〜〜い、ぽ茶!!!!!!

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