ねているときいがいねむい

ねているとき いがい ねむい

人には人の乳酸菌

2023年2月のこと

約3年暮らした部屋を退居した。正直まだ実感がない。

異動の内辞を受けたのはちょうど1ヶ月前のこと。朝からみんながそわそわする中いつもどおりにしていたら、隣の席の後輩に「全然落ち着いてますね」と言われた。「なるようにしかならないからね」と余裕ぶっていたものの、いざ呼び出されて蓋を開けてみると異動時期が1ヶ月後で、へっ?来月からですか?なんでですか?とあからさまに動揺してしまった。特にこれと言った理由もわからず、部長室でへらへらと笑うことしかできなかった。

席に戻ると島の人たちからにやにやしながら「どうだった?」と聞かれたので、「異動先は予告通りですけど、来月です」と答えた。全然時間ない。やばいです。どうしよう。なんでですか?理由なく3月異動って普通あります?などと騒いでいると、隣の後輩から「さっきまでの余裕はどこいったんですか」と言われ、またデカい声でゲラゲラ笑った。こうなることを知っててやってたんかと言われてもおかしくないくらい見事なフリ。

赴任してきたときはコロナの影響で転勤が凍結になり、ホテル暮らしを余儀なくされるなどして転入が1ヶ月遅れた。そして今回は謎に1ヶ月早く出ていくことになった。冒頭では約3年と書いたが、実質2年10ヶ月。いつだってイレギュラー。そういう星の元に生まれたのだ…と思うことにする。ショートコント『人生』

 

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2月は毎週末のように職場の人たちと飲んでいた。「絶対に終電守ろうね〜(ヨネダ2000)」を合言葉に乾杯するも、楽しくなってくると23時18分の終電には当然間に合うはずもなく、結果、高い深夜料金を払ってタクシーで帰るか、ありえない距離を歩いて帰るか、カラオケで歌い明かして朝を迎えた。規定値を超えるほどの夜を使いはたして。この歳でオールはさすがに体力的に厳しく、帰ってから翌日の昼過ぎまでベッドから出ることができなかった。週明け聞くと他の人たちもやはり昼まで身体が使いものにならなかったと話していた。2月のトピック週末1.5日問題。

 

異動が決まってからは出張が連続して組まれたが、どれもイージーミッションだったため、さながら卒業旅行のような気分だった。出張先での夜、繁華街に繰り出す途中にカヌレ専門店を見つけた。先輩と後輩に店の前で待ってもらって、プレーンカヌレとプレミアムカヌレを自分用に2個買った。ご機嫌で退店して白い小さな箱の持ち手を親指と人差し指でつまんで、このボケたぶん伝わらないだろうな…と思いながら「娘にお土産を買ってくる酔っ払い親父」と言ったら、先輩も後輩も「サザエさんでよく見るやつ」「今どきそれやる人いないんだよ」と理解(わかっ)てくれてよかった。

「絶対忘れるよ」という先輩の警告どおり、2軒目の居酒屋にカヌレを置き忘れて店を出たが、後輩が慣れた様子で「忘れてましたよ」と持ってきてくれた。普段からよく給湯室にゴミを捨てに行ってマグカップを洗うとそのままゴミ箱を置いてきてしまうことがあったのだが、その度に後輩が「また忘れてましたよ」と言って戻してくれるのだった。よくできた後輩に感謝しつつ、泥水の水たまりの上につるつるに凍った氷がぼこぼこしている横断歩道を渡ったら、バナナの皮を踏んでコケる人の横滑りver.とでもいうような漫画みたいなコケ方をしてしまった。ちょうど後輩が「さっきここでコケたんで気をつけてください」の「さい」を言い終えるか終えないかくらいのタイミングであった。カヌレだけは無事何とか死守できた。プレーンカヌレを食べてみて大丈夫だったので、プレミアムカヌレを先輩にあげたら「微妙に湿ってる」「じゃりじゃりする」と言いながらもぐもぐ食べていた。カヌレって撥水性ありますからね。後世に伝わる泥カヌレ事件。

 

みちみちに詰められた「歯」

 

職場の人たちと4人で飲みに行って、3人から立て続けに「安藤サクラ」「安藤サクラ」「安藤サクラ」と言われる場面があり、咄嗟に自分も「安藤サクラ」と返した。するとまた3人に「安藤サクラ」「安藤サクラ」「安藤サクラ」と言われ、状況が飲み込めぬままこの流れは一旦そこで終了した。

別の日の飲み会で、今度はしっかり「安藤サクラに似てる」と言われた。自分ではあまり似てるとは思わないが、表情や仕草や髪型を含めた全体的な雰囲気を指して言っているのだと思う。「安藤サクラさん好きだから嬉しいです」と喜んでいると、「安藤サクラ崩れ」と水を差され、誰かがさらに「安藤サクラから崩れることってあるんですか」と上塗りを重ねて笑いが起きた。うわ〜〜この流れ。「そういうの面白くないからやめた方が良いですよ」ってピシャリと言えたらいいのだけれど、結局「今のは安藤サクラに失礼です」という返しでその場のノリに便乗してしまった。

こういうとき、ルッキズム問題に限らずもっと広い意味で、どう対応するのが正解なのかずっとぐるぐる考えている。些細な一言をきっかけに、ピピーッ!今の発言で私は傷つきました。あなたが加害者で私が被害者。判決をお願いします。みたいに線引きしてしまうのはあまりに乱暴なやり方だなぁ…と思う。相手との関係性にもよるだろうけど、例えば今回のようにある程度信頼関係のある人たちとの間でこういう流れに遭遇したときに、相手は悪意なく放った発言に対してそこまで目くじらを立てる必要はあるだろうか…と思うのは私の許容値が基準であって、どこまで耐え得るかはあくまで人による。自分は割と耐性が強い方だと思うし、安藤サクラに似てると言われて嬉しかった(ブラッシュアップライフ最終回よかったね〜詳しくは来月のまとめで書く)ので嫌な気はしなかったけれど、あの反応が最適解でなかったのはわかる。

なんていうか自分は「あなたには怒る権利がある」とか「誰もあなたを傷つけることは許されない」みたいな思想(と書くと悪意があるな)とか怒れ怒れ怒れ的なムーブメントに対して諸手を挙げて賛同することはできなくて、まあまあまあ…みたいなスタンスをとってしまう。けれども嫌な人は嫌だろうし、傷つく人がいる飲み会は楽しくないし、結局あくまで人による。だからこそ他の誰かがターゲットにされたときは感度を上げて察知しなければならないし、「多様性」とか「今はそういう時代ですから」みたいな安易な言葉を借りずに、オイ!ってことを伝えられるようになりたい。できればその場の空気は壊さずにユーモアでもってフォローできたら良いのかな…甘っちょろい考えかもしれないけれど平和的解決がベストだと思う。Chu! まとめ方下手でごめん。

 

ちなみに3人は『ブラッシュアップライフ』を見ていないらしい。見といてよ。私がいなくなってしばらく経ったら録画分を一気に見て、私のことを思い出してほしい。

主人公の見た目ではなく性格的な面を見て「人生何周目ですか?ってほど達観してるよね」と言ってくれた人がいたが、テレビを持っていないので毎回あらすじをまとめたサイトを読んで内容を追っているそうだ。見といてよ。

 

送別会の話題は3月のことだから3月のまとめに書く。いろんなことが駆け足でシームレスに過ぎていったから気持ちの整理が追いついてない。今の職場の人たちが大好きだから、とにかく今はすごく寂しい。

 

読んだ本とか漫画とか

『いやはや熱海くん』田沼朝

会話の言葉選びがいちいち良い。先輩の家族の食卓のなんとも言えない温度感と距離感がすごく好きです。

 

『メダリスト(1)〜(7) 』つるまいかだ

後輩が「めちゃめちゃ面白いですよ」と貸してくれて一気に読んだ。めちゃめちゃ面白い。構成がしっかりしているうえにキャラクターデザインも魅力的で、間に挟まれるギャグや小ネタもレベルが高い。メインストーリーの展開にあっては、挫折や裏切りを乗り越えて…みたいな要素を排除して、主人公とコーチが一貫して前向きなのが強い。

 

『違国日記(10)』ヤマシタトモコ

ゆっくりだけど一歩ずつ前に進んでいる。

 

『うみべのストーブ』大白小蟹

じ〜〜〜ん

 

見た映画とか

『エゴイスト』監督:松永大司

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最後の最後にタイトルの意味がわかって、すごかった。

感想を言葉にするのが難しい作品なので、気になった方はサムソン高橋さんの映画評を読んでほしいです。

 

 

BLUE GIANT』監督:立川譲

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音楽が最高にかっこよくてDolbyで見れてよかった。

 

『少女は卒業しない』監督:中川駿

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河合優実さん、本当に素敵な役者さんだな〜〜〜藤原季節が藤原季節だと気付くまでかなり時差があった。

 

聞いてた音楽とか

 

『NEW WORLD』lyrical school

新しい風が吹き込まれた新体制のリリスク!変わっていくことを前向きにとらえる歌詞にすごく元気付けられた。

 

 

引越しの荷物搬入までの間は実家に滞在している。つい先日、父の身体に病気が見つかり、明日からしばらく治療のために入院する。電話で聞いていた話より深刻なのかもしれない。父の顔を見てすぐにわかった。台所で洗い物をしながら母と話をした。急なことで母もだいぶ動揺しているようだった。先日スーパーの駐車場でけいこさん(母の親友)にばったり会ったら、何も言葉が出てこなくて涙がボロボロ溢れてしまったと話していた。母のそばにけいこさんという心強い友達がいてくれて本当によかった。

普段は絶対そんなことを言わない父に、珍しく背中をさすってほしいと頼まれた。「痩せたと思うか?」と聞かれたので「全然」と答えながら、喉の奥の方が痛くなった。兄が「俺らまで落ち込んでたらどうしようもないから、いつもどおりでいないと」と言っていたのを思い出してぐっと堪えた。「引越し先の市は水道の基本料がアホみたいに高くて」というようなどうでもいいことをいつもよりたくさん話した。