前回のインタビューから約1年間の空白を挟んでの一般人1万字インタビュー。今回話を伺ったY君(仮名)は都内在住の会社員。前置きは短めにしていきなり本編スタートです。
事前に送ってもらったプロフィールを拝見して
Q:大学卒業後は1年半就活浪人?
Y:あ、でも5社くらいしか受けてない。
Q:5社?
Y:え…うん、あっ、ちょっと待って1本だけタバコ吸ってきても良い?
Q:どうぞどうぞ。
(開始早々のタバコ休憩)
地下のレトロな純喫茶
Y:あ、で、5社くらいしか受けなかった。とにかくやる気がなかったのと、なんか変に自分にめちゃくちゃ自信があった。就活してたときは勘違いしちゃってて、もちろん当然受かんなかった。
Q:持ち駒なくなって焦ったりはしなかった?
Y:しなかったな。もう来年やればいいやみたいな。環境的にも音楽系のサークルに入ってたから特段焦ったりとかはしなかった。今もバンド続けてるやつとかフリーターしてるやついるし。音楽サークルに入った理由は人が少なくて居心地よかったから。
Q:やってたのはコピーバンド?
Y:1年目はコピーしてて、2年目以降は自分たちで作って。昔の話だけどね。
Q:何の楽器やってたの?
Y:ベースです。
Q:ベースっぽいわ〜
Y:褒め言葉として受け取っとくわ(笑) たまに言われる「っぽいわ」って。ベースはじめたのは高校から。部活は入ってなくて、特進コースだから基本的に入らないのが当たり前というか。
Q:授業終わったら帰って勉強?
Y:まあ、そうだね…時間はめちゃくちゃあった。そう言われてみると高校のとき俺何してたんだろ…(笑)
小中エスカレーター式
Q:小学校からカーストみたいなのはあった?
Y:スクールカーストって言って良いのかわかんないけど、所謂頭良くて、かっこよくて、スポーツ万能で、家柄も良い…そういう人たちにはもう適わない。上位層はサッカーだったりバスケだったりテニスだったり、自然と集まる。
Q:小学校は試験受けて入ったの?
Y:カメ触ったりとかそういうのがあった。試験は正直あんまり覚えてない。親はそういう教育受けさせたい願望があったんだろうね。父親は公務員で母親は薬剤師…ちょっと待ってこれさ、楽しい?
Q:毎回こんな感じだけど…何か面白エピソードあれば是非。
Y:言わなきゃ良かった。なんだろう…小学校…こういうの間空けると良くないんだけどな…ざっくりし過ぎてるからな…面白エピソード…
Q:(「特になし」…と)
学級委員とか目立つようなことはやってた?
Y:全然。むしろ絶対にやりたくなかった。シンプルに嫌だっていうのもあるんだけど、うちの学校みんな必死に内申点を稼ごうとするから、そういうのが嫌いで委員とかはやってなかった。
Q:そういう反抗心が芽生えるの早くない?
Y:そうかな(笑) あ、でもこれは中学生の頃かな…小学校の記憶…あんまり無いな…悲しくなってきた…。思いつかないってことは小学校は何も考えず遊んでたんだと思う。特別はまってるものもなかったし。
Q:(中学校からはじめた)野球はポジションどこだった?
Y:ショートとレフト。全部左側。
Q:ショート。花形だ。
Y:カウントとかいちいち考えなくちゃなんないし頭使うから、それが当時は嫌だった。でも野球は好きだった。それこそ部活終わったあとも何時間も残ったりして。
高校時代の青春
Y:高校のとき彼女はいなかったけど好きな子がいた。大袈裟でも何でもなく新垣結衣、ガッキーをさらに可愛くしたような子で、
Q:可愛すぎる…
Y:だいぶ思い出補正入ってるけど。一目惚れしちゃって、クラスも科も階も違うし話したこともないけど、もうどうしようもなんなくなって、学園祭で思い切って「アドレス交換してください」って話しかけたら「ごめんなさい」って言われて、それでもう泣き崩れて…(笑)
Q:青春だな~
Y:友達がカラオケで慰めてくれて、ドリカムの『何度でも』を歌って「10000回だめでも10001回目だったらいけるかもしれないだろ!」って。
Q:選曲…(笑) 音楽は何聴いてた?
Y:高校のときはもうメロコア、青春パンク。それこそゴイステ、銀杏、ハイスタとかHawaiian6とかエルレも聴いてたね。あとビートルズとかWeezerとか、ミッシェル、ナンバーガール、ざっくりそんな感じかな。
Q:今一番遊ぶのも高校のときの友達?
Y:高校かな。最近あんまり人と会わなくなった。ちょっと前はすごい感傷的になってて「この友達と人生であと何回会えるんだろう」とか思って会うようにしてたんだけど…最近は一人の方が楽しいなって。
一人が好きになったのは大学から。小中高は男でバカ騒ぎみたいな、それこそ男子校行きたかったのもとにかく何も考えないでバカやってたいってのがあったからで。結局男子校は落ちて共学だったけど男だけでずっとバカやってた。よっぽど楽しかったのかお母さんに「お母さん、俺学校楽しい!」って言ってたらしい(笑)
Q:大学から意識が変わったと…
Y:大学からだね。大学行きたかったのもとにかくここから出たい、どこでも良いからここじゃないどこかへって思ってた。バイト先では人見知り全開で、毎回行きたくなかった。所謂大学生のノリが苦手だったというか。
10年付き合った彼女との別れ
Q:彼女は同い年?
Y:1個下。一緒の音楽サークルの子で、もともと可愛いなって思ってたんだけど結構あっちからガンガンアプローチあって。変わり者だったかな。俺がすごい、変な人が好きなんだよね。彼女は聞いてる音楽も頭脳警察とか戸川純とかあぶらだことか…椎名林檎とか安藤裕子とかくるりとかも聞いてたけど、でもやっぱ変わってたね。はじめて家に遊び行ったとき、壁に筆でめちゃくちゃでっかく「唯我独尊」って書いてあって、刃牙の家みたいだなと思った(笑)
Q:漫画みたいなサブカルだ…
Y:本人はサブカルって言われるのすごい嫌ってたけど…こういうの(喫茶店に飾ってあった丸尾末広の絵)とか好きだったな。
おかわり半額。丸尾末広の絵も撮れば良かった。
Q:ここ彼女と来たことある?
Y:…あるね。
Q:あるんだ(笑) よく来れるね。
Y:でもそうなるともうどこも歩けないからさ。別れたあとはマジで街でしょっちゅう泣いてた。いろんなこと思い出して。
Q:前に聞いた、「高円寺の阿波踊り見て泣いた」って話がすごい好きで…
Y:あ~、なんかお祭りの雰囲気って感傷的になるっていうか。特に東京だからってのもあると思うんだけど、世間体とかしがらみを全然気にしない粋な空気にグッときてしまって…
Q:別れてからも会ったりする?
Y:最近も会った。「彼氏いるの?」って聞いたら「いるよ」って言われて、わかってはいたんだけど「あっ、うん、ああ…」ってキョドっちゃって、ショックだった。
Q:また戻りたいとは考えない?
Y:考え…るけど、うまくいく自信がない。昔みたいな熱量が正直ないというか。前は「俺のすべてだ」「この人がいなかったら俺の人生どうでもいいんだろうな」って思ってて、よく一人で彼女が死んじゃう想像して泣いたりとかしてた。
Q:嫌だなその想像…
Y:ほんと良くないんだけど、共依存というか、毎週会ってたし1回も飽きたことはなかったな。まあこんなこと言うのはほんと憚られるんだけど。最後の方は会い過ぎてて、全部共有しようとし過ぎてお互いの行動が制限されていった。そういうフラストレーションが溜まって、俺から別れようって言った。8年目…だね。そこから2年くらいは年1回くらいしか会わない期間があって、2年後に向こうから「好きな人ができた」って言われて。言われたら言われたで気狂うっていう(笑)
Q:面倒くさ〜(笑)
Y:自分から別れようって言った手前もあるし、好きな人いるって言われちゃったらもう、落ち込むしかないよね。やっぱり今も何しても思い出す…彼女つくろうってなってもパッと顔思い浮かんだりするし、バリバリ引きずってるよ。
最近の活動
Q:吹っ切るために何かした?
Y:最近は街コン…新橋で金曜の夜、人がごった返してる中で輪になって自己紹介させられた。
Q:外?
Y:SL広場の前。めちゃめちゃ恥ずかしくて、声も聞こえないし、何これ?みたいな。席に着いてLINE交換したけど、中身もよく知らないから送る気になれないというか…指が動かない。つい最近行ったのはコロナの影響で参加者10人しかいなくて、もう街コンで良いことなんてあんのかな?って思っちゃった。そういうとこ行っても結局男とばっか喋っちゃうし、酒飲んで楽しければいいやみたいな。
Q:お酒で失敗する話多いですよね。
Y:普段は基本ローテンションだから、一口飲んだらもうどうでもいいやって。お酒弱いのもあるし、なんだろ、一時期飲みまくってたときがあって「酔っ払ったやつが正義だ」って思ってた。退廃的なものに憧れてるわけじゃないけど、後先考えない方が楽しいって思ってた時期があった。その辺で寝たりするようになったのは社会人になってから。やっぱ3時だね。大体寝るのは。
Q:なんだその決まり(笑)
Y:自分の中のHPがなくなって、気付いたら寝るのはやっぱ3時。
Q:K-POPは何聞く?
Y:Red Velvetが一番好き。BLACKPINKとかITZYも聞く。向こうはアメリカの影響ガッチガチに受けてる。
Q:メンバーの顔覚えられる?
Y:覚えられる。「覚えられる」で思い出したんだけど、この前相席屋で出会った女の子と2人でご飯行って2時間くらい喋ったんだけど、翌日全然顔を思い出せなくて…。これ友達とも話したんだけど、女の子には「なんとなく生きてきちゃった系」って層が一定数いるよなって。何に熱中するわけでもなく、日々呆然と生きてきたんだろうなって人。だからなんか、熱量ある人が好きだなやっぱり。「なんとなく生きてきちゃった系」って周りにいない?
Q:表面しかないみたいな?
Y:表面的につくってるとかじゃなくて、ガチで何の引き出しもないというか……なんか性格悪い人みたいだな俺。今ふと自分を俯瞰で見てしまった。
Q:――1回休憩しますか。
(2回目のタバコ休憩)
なんとなく続いている今の仕事
Q:転職活動はしてない?
Y:一時期やってて内定もらったりしたんだけど、給料落ちて、そんなにやりたいことでもなかったから結局辞退して、今はあまり活動してない。
Q:就職先に求める一番重要な条件は?
Y:やっぱり楽しくないとダメかな。つまんないことを…まあ現在やってるけど、同じことを繰り返してると脳ミソ腐っていくなって。光の速さで時間が過ぎていく。好きじゃないから学ぼうとも思わないし…よくやってきたなって自分でも思う。ほんと処世術だけでやって来たって感じ(笑)
Q:資格試験とかはないの?
Y:ないね~。そういう試験だったりプロジェクトだったりがあれば自分も何かあったのかもしれないけど、淡々と細かい仕事をこなしていくだけだから、やりがいないし、お金稼ぐためだけに働いてる。居心地が良いだけ。
Q:居心地大事だけどね…
Y:人はすごく良いし、よく飲みに行ったりもする。ただやっぱり印刷業界は本当に先がない。ガンガン吸収されるしガンガン潰れる。大手に一極集中して小さいところは安い単価で短納期で、いいからやれ!みたいな。最近女性も増えてきてはいるけど基本的に男業界で、いいからやれ!って言うやつが勝ちって世界。
Q:『宮本から君へ』じゃん。
Y:いやいやいや全然違う全然違う。『宮本から君へ』は熱量があるっていうか、「己」がある。うちの業界は客が言ってるからやれ!って業界だから脳が鈍化する。
Q:ずっとここにいたらヤバいなっていう感覚は?
Y:薄れてきてる。もちろん今すぐにでも脱出しなきゃいけないんだろうけど体が重い。下手したら3時に寝て7時に起きるとか、睡眠時間減ると思考能力も低下するから、最近は生活を改めるところからスタートしてる。お酒飲まなかったりとか。
想像を絶するルーズさ
Q:仕事含めしばらくは今のままで、って感じ?
Y:毎日やんなきゃなとは思ってるんだけど…今週からやろうかな(笑) 嫌なことはめちゃくちゃ後回しにする。それに関しては本当に酷い。何回も電気止まるし、1回カード引き落としにしようとしたことはあるんだけど書類に不備があって返ってきちゃって、そこから5年くらいそのまま…。
自分でもびっくりするのが、スーパーに行って「コショウ切らしてるから買わなきゃ」って思ってパッと見たらコショウすぐそこにあったんだけど、「そこまで歩くの面倒くさいからいいや」って…もうわかんない(笑)
Q:自炊はするんだ?
Y:するね。外でばっかり食べてると感動が薄れる。やっぱり外食は外食の味だ…って思う。だから食はかなりバランスとってる。夜は自炊して、明日はこれにして、まあ次は外で食うか…とか、そういうのばっかり考えてる。
宗教と母親との死別
Q:地元に戻りたい願望は全然ない?
Y:ない….けど仕事があれば帰ってもいいかな。母ちゃん死んじゃったから、今年の1月。それもまあいろいろあるんだけど、母ちゃん宗教だったんだよ。「体は神様から与えられたものだ」っていう教えを信じて手術拒否して…。手術してれば問題なかったんだけど、薬剤師だから知識はあって「この治療はおかしい」じゃないけど、頑固だから、こだわって死んでった感じかな…。今父ちゃんが一人で心配だから、帰ってもいいかなっていうのもある。
Q:そうだったんだ…
Y:母親も妄信してるわけじゃなくてライトな教徒だったんだけど、死に近づくにつれ宗教にすがるようになってしまったな…って。自分が小さい頃、喘息になって母親に助け求めたら、タンスから薄紙に包まれた古米?を出してきて食べさせられたときは流石に笑ったけど。基本的に家族は宗教のこと笑って茶化してた。だから死ぬ直前までこんなに宗教にすがってたんだってこと知らなくて…
Q:お母さんが亡くなって…やっぱり何か変わった?
Y:そうだね…変わったかな...多分ね全然変わってないかな…。変わんなきゃいけないんだろうけど、まだ受け入れられない自分がいるっていうか、習慣ってそう変えられないよね。本来ここで一念発起して自分の生活正すなり必要だとは思うんだけど...情けねぇな。よく兄弟で話すのは「下手なことできないな」ってこと。健康は意識するようになったかな。
Q:タバコをやめる気は?
Y:1週間前くらいまではやめてた。でももうやめると思う。やめる。
好きな漫画とか映画
Q:一番好きな漫画は?
Y:やっぱり『宮本から君へ』かな。仕事漫画とは捉えてない。良い意味でも悪い意味でも人に影響を与える漫画。みんなが割り切るところを堂々と否定してくる。熱いのに弱いんだよね。あと文章がすごい好き。少女漫画のもわもわ~っていう心理描写読むと「全部言わなくていいから」「野暮じゃん」って思っちゃって好きになれない。新井英樹の漫画はそういうのを全部排除して読者に想像を委ねてくる。『キーチ!!』とかめちゃくちゃ面白い。『ザ・ワールド・イズ・マイン』とか『愛しのアイリーン』とか。他は古谷実『シガテラ』とか。
Q:好きな映画は?
Y:好きな映画…難しい…漫画もそうだけど好きなものがいっぱいあるからなぁ…。いつも言うのは『タクシードライバー』。あとは『アデル、ブルーは熱い色』『俺たちに明日はない』『フェイシズ』とか。
Q:最近の作品はそんなに見ない?
Y:見てないね…音楽も小説も漫画も、新しいものを見なくなった。あんまり良くないんだけど。テレビも大学からずっとない。絶対あった方が良いとは思う(笑)
自分に対する評価
Y:過去の人(第2回参照)のインタビューに「自己分析は常にしてる」って書いてあったけど、自分にはその感覚がわからない。自己分析すると自分の嫌なところしか出てこないから、基本的に人に言われて自分のことを気付くことが多い。友達に「お前二重だよな」って言われて「俺って二重なんだ」みたいな。
Q:見た目も含めて自分に興味ない?
Y:そうかも。「背高いよな」「人見知りだよな」とか言われてはじめて「あ、俺ってそうなんだ」って気付くことが多い。
Q:「自分はこういう人間だ」みたいなことはあまり考えない?
Y:考えても変える気がないんだと思う。それこそお酒飲んだとき熱くならないようにしようとか、最低限のことは変えていきたいけど…我が強いんだろうな。
大学に芸術系の学科があったから、その影響も受けてるかも。そういう人たちに囲まれてると自分は何もないな…と思う。どっかで厨二病的なところがあると思うんだけど…まあ俺は俺だしみたいな(笑)
Q:じゃあこれからも今まで通り行く…ということですかね。
Y:情けねぇ~(笑) みんなどうなんだろ、自分を顧みれるのかな?
Q:流れとか転機があるんじゃない?
Y:それでいうと俺、社会人になってすごい変わったと思う。中学の同窓会でも「変わったな」ってすごい言われた。普段は人見知りだしコミュニケーション能力もないけど…なんだろ、変わったっていうより筋肉ついたって感じかな。やっぱり人見知りだと仕事になんないから、みんなが挨拶しないとしたくなるし…ただみんなが言ってると逆にしなくていいやって思うし…(笑)
Q:最後に何か言い残したことは?
Y:話してて俺って何もねぇな…ってすごい思った。自分がどう思うかよりどう映ってるかの方が気になるから…うん…でも言われても何も気にしないんだけど。人によって持たれる印象が全然違う。真面目って言われたり天然って言われたり、俺…自分がわかんない。
Q:30歳(笑)
Y:迷子です迷子。意識はしてないんだけど、「対その人」の自分になるっていうか。まあ全部これが俺だよなって一応納得してる。こんなんで大丈夫かな…めちゃくちゃ不安だわ。
Q:大丈夫。OKです。
~Fin.~
こうして1万字インタビューは幕を閉じた。
以下、本人による原文まま掲載
【プロフィール】
東京都在住、印刷会社勤務、30才、男。
1990年、4人兄弟の2番目として山形県新庄市で生まれる。家族構成は、父、母(今年1月に他界)、姉、妹2人。数年で山形市に移り住み、カトリックの幼稚園に入園。小学校からは国立小学校へ入学し、エスカレーターで同じ付属の中学へ。野球部に所属する。卒業後は、地元の公立高の受験に失敗して私立へ。友人の影響でロックに傾倒する。大学も同様に、地方国立受験に失敗し、都内の私立文学部英文学科へ進学。音楽サークルに所属し、そこでも細々とバンド活動に勤しむ。卒業後は、音楽と小説と映画と酒による無為無策な約1年半のフリーター生活を挟み、一社目の会社に勤務中。生産管理を経て、現在は営業職に従事。入って3日で辞めようと思って早7年。自問自答を繰り返しながら徒に生きる日々。2年ほど前、約8年付き合った彼女と別れる。
趣味は音楽鑑賞、ごはんを食べること。
性格は気分屋だが気使い。フットワークは軽いが頭でっかち。ジェネラリストなのに完璧主義。気も短い。時間にルーズ。好きなこと以外はとにかく何するにしても腰が重い。でも最後は楽観的。
【感想】
初めてこのインタビューを知ったとき、羨ましいと思ったのが素直な感想だった。少し大袈裟だが、まるでインタビュイーが世界の中心か、はたまた物語の主人公のような印象を受けたからだ。しかも対象内容が自分自身についてなので尚更だった。一般的に、成長過程の中で、自分は特別な人間ではないと悟る瞬間があるはずだが、私にはどこかそれが欠如し、未だに渇きを感じている幼さがあるためだと今になって思う。
先日、インタビューの誘いを受け、やりたいと安易に返事したのはいいが、昔から私は自己分析を忌避して生きてきた上に、自分の話をするのが基本的には好きではないため、不適任だという不安もあった。ただ、自分を知るいいきっかけになると思い、短い時間の荒療治的セラピーではあるが、最後は、まあなんとかなるだろうと半ば投げやりな気持ちで当日に至った。
結論から言うと、インタビュー当日は少し落ち込んだ笑
話せば話すほど、「俺って何なんだ」と反芻したり、「俺ってこんな感じか」と情けなくなったりしては結局納得のいく答えが見つからず、また迷った。話した自分と、頭の中の自分が乖離してむず痒かった。知ってほしいとは微塵も思わないくせに、誤解されるのだけはとにかく嫌だったからだ。勿論、話すことだけが自己昇華への媒介ではないが、人に届いた時点で初めて自分と言えるようにも思えた。それだけに少し不安が残った。
私は、自分に課した理想の自分が幾分か高かったようにも思えた。よくよく考えれば、普通なんてどこにもなければ、オリジナルなんてものもどこにもない。所詮、自意識や自我なんてものは、言葉にするには脆く、他人に提示できるような形ある代物ではない。日々時々の環境に応じて、流動的にたゆたう超多面的なものだ。なんだか、「何もわかりませんでした」と、諦めや逃避的な響きに聞こえるが、少なくとも現在の自分が思った正直な感想だった。
反省点としては、もっと貪欲に掘り下げて話すべきだったということ。他人の話ばかりしたり、「◯◯は好き?」という問いに対して「はい」「いいえ」だけで答えたりと、インタビュアー泣かせというか見当外れな受け答えをしてしまったと後悔した。会話のテンポに気を取られ少し慌てていたきらいもあった。
最後に、自分を見つめ直す機会を与えてくれた主に感謝します。行動して発信する気持ちを見習うべく、もう少し前傾姿勢になって生きていこうと思いました。また、私は至らないところだらけなので、読者の方々の中には不快に感じられる方もいらっしゃるかと思いますが、30にもなってこんな馬鹿がいるんだなくらいに思っていただければ幸いです。
2020年3月
【編集後記】
はじめに、ご親族に不幸があったことを知らずにインタビューを持ちかけてしまい申し訳なかったです。ともすれば精神を擦り減らすことになるこの企画を快く引き受けてくれたことに感謝します。
毎回悩む編集後記。A-Studioの締めで鶴瓶さんがゲストを語るコーナーあるじゃないですか。それの立ち位置になってない?…と思うのは多分私だけなので、気負わず自由に書きますね。
【感想】にあった「荒療治的セラピー」というワードには笑ってしまいました。本人はインタビューを終えて「自分がどう書かれるか不安だ」と話していたけれど、私はセラピストでも細木数子でもないので「ズバリあなたはこういう人間です!」と断言することはできないし、そういう企画でもありません。
インタビュー記事は投稿前に本人に確認してもらい「こう書いてほしい」「ここは削ってほしい」といった要望にはできるだけ応えるようにしています。今回そういう要望はほとんどありませんでした。これは彼の潔さなのか、気遣いなのか、単に面倒になっただけなのかはわかりませんが、編集する側としてはめちゃくちゃ楽でした。
インタビューを受けようと思った理由が「自分のことを知って欲しい」からではなく「自分のことを知りたい」からというのは、今までにない視点で新鮮でした。【感想】の感想、普通に文章上手いからすらすら読めたけど、「たゆたう」使う一般男性はじめて見た。
一点フォローを入れると質問に対して「はい」「いいえ」で終わるようなことはなく、むしろこちらにも質問を振ってくれる場面が多々あって、これは街コン無双だろうな〜というのが雑感です。ただ街コン全盛期はもう過ぎてるような…最近あまり聞かない気がします。
最後に読者へメッセージあったけど、そんなに忖度しなくてもこの回に共感する人は多いと思う。順風満帆な人生を送る人の武勇伝よりも、迷いながらも泥臭く進もうとする人のストーリーの方が面白いし興味がある。「自分がわからない」と言いつつも、感想を読む限り答えはもう出ているようにも見えました。人には多面性があり、一概に「自分はこういう人間だ」と言えないからこそ味があって面白い。完全に着地点を見失ってしまいましたが、そろそろ1万字に到達しますのでこの辺で失礼させていただきます。